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by norikoosumi
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数学はロマンチック(2006年1月22日河北新報『前略早々 博士から博士へ』

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【コタニより】
 何度も泣いちゃいましたか。「やっぱりオオスミ先生は熱い人なんだ」
 私は一箇所だけ。お手伝いさんが、完全数を発見したときの「けれど仕方ないではないか、私は発見したのだから」は、頭の中でなんどもこだまして響いた。胸のうちで静かに燃える発見の喜びをよく表しているよね。
 博士の専門は整数論。数学の中でもっとも純粋で美しい分野だ。誰でも知っている整数1、2、3…に導かれて、人間の想像力のみによって築き上げられた荘厳な世界。実際に手で触ることも、見ることもできない知能の中にだけ存在する世界が、これほど堅固で整然としているのを思うと、確かに「神さまがどこかに書いていたものを発見しているだけ」という気持ちになる。
 三百五十年続いたフェルマーの定理が一九九五年にワイルスによって解決されたことは有名だが(だろうか?)、単純な方程式の裏に、素数たちの奏でる変奏曲が隠れている。随分と抽象的に聞こえるかもしれないし、抽象的であるが故に数学を愛する人もいる。しかし、博士にとって「素数」が慈しむ対象であったのと同じように、多くの数学者にとって数式の表す世界は、確かな手触りを持って実在している。
 オオスミ先生、加藤和也『解決!フェルマーの最終定理』(日本評論社)読んでみて。絶対泣けるから。数学はロマンチックなのですよ。
 小川洋子が、江夏を横軸に持ってきたのは、決して背番号が完全数だからという理由だけではないだろう。実は私も江夏と北ノ湖が大好きだった(北ノ湖>江夏だけど)。
 天才と言われた人たちだが、むしろ、自分は努力に支えられているという自信に胸を張っていた。自信というよりは謙虚な誇りを持っている姿が好きだった。相撲・野球に対する彼らの姿には、数字に仕えるような博士の姿勢と共通のものがある。
 オオスミ先生、ぜひ映画ご一緒しましょう。その前に二十七日にせんだいメディアテークであるサイエンス・カフェにも遊びに来て。
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by norikoosumi | 2006-01-22 15:31 | 河北新報往復書簡

映画、見に行く?(2006年1月15日河北新報『前略早々 博士から博士へ』)

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【オオスミより】
 皆さん、大学の先生はいつも大学にいると思うなかれ。実はかなりの頻度で出張がある。私の研究分野は「生物学」の中でも「脳」を対象とし、その「発生発達」を科学しているのだが、関係する学会(研究の発表会)が年間六つほども。また、研究はポケットマネーではなく税金をもとにしているので、その報告会も多数。他大学に呼ばれてセミナーや特別講義を行うこともある。さらには、政府関係の委員会やら学会の理事会やら……と、さまざまな理由で出張しなければならない。
 さて、先日「映画も公開予定なんだけど、文庫化されたから、ぜひ!」とコタニ先生に言われ、『博士の愛した数式』(小川洋子著、新潮文庫)を読んだ。東京出張の帰りの新幹線で読み始め、そのまま帰宅後に夜更かしして読み終わった。こんなに一気に本を読んだのは何カ月ぶりだろう。
 登場人物といえば、新しい記憶を持つことのできない数学者の「博士」、離れに住まう博士の家政婦として雇われる「私」と、博士に√(ルート)という名前を付けてもらった、十歳になる「私」の息子、そして母屋に住む博士の義理の妹の未亡人くらいだ。その少ない登場人物をつなぐのはさまざまな美しい数式と、それとおよそ不釣り合いに見える元タイガースの「江夏」である。大ベストセラーなので私が書評をコメントする必要はないのだが、小川さんの筆致はどの人物に対しても優しく、私の涙腺は何度もゆるんだ。その意味では新幹線で読むには不適当であった。
 さらに「数字」や「数式」に対しても愛しさと畏怖があふれている。「素数」は知っていたが、「完全数」や「三角数」、はたまた「友愛数」などは知らなかった。さまざまな数字に「意味」や「性格」が隠されている。数学がこんなにロマンチックだとは思わなかったなあ……。さすが、コタニ先生が勧めるだけのことはある。中学くらいのときにこの本を読んだら、数学に対する気持ちがずいぶんと違ったことだろう。ねえコタニさん、映画、一緒に見に行く?
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by norikoosumi | 2006-01-22 15:28 | 河北新報往復書簡

往復書簡、してみる?(2006年1月8日河北新報『前略早々 博士から博士へ』)

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【オオスミより】
 研究室のコンピュータの電子メールフォルダに残っている記録によれば、コタニさんという、今では大の仲良しかつ飲み友達と初めてメールを交わしたのは2003年5月21日ということらしい。学内のとある委員会でご一緒したのが知り合ったきっかけだが、「突然ですが、コタニさんはお酒飲まれます?」とメールで聞いてみた。返事は「もちろん飲みます! もしオオスミセンセイがお忙しくないとき(きっとお忙しいでしょうが)あれば、一度お茶かお食事でもしたいですね」。
 だが、記念すべき最初の飲み会がどこだったか覚えていない。とっても楽しくて面白い方だから、またご一緒したいな・・・という印象があったはずで、そうでなければ交流は続いていなかっただろう。一番最初のときには「議論好き」であることもまだ知らなかった(まだ猫をかぶっていたと思われる)。泥臭い生物学の分野で研究し、高校で教わった微分も積分も普段は使わなくなっている私から見たら、大学の「数学科」で教鞭をとっているというだけで尊敬の対象なのだ。



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【コタニより】
学内のとある委員会で,大隅典子という名前を見た瞬間,中学校のとき有名だった同名の女性を思い出した.女性にして生徒会会長,私のように何をやっても「ガンちゃんダメね〜」と世話をやかれる側だった人間からみると輝く存在だった.おそるおそる聞いてみると同一人物.それ以来,「おいしい物食べた〜い」「ワイン飲みた〜い」というとオオスミ先生がさっと段取ってくれる.最初の「ご飯」でオオスミ邸に招かれ,料理の本がズラっと並ぶ本棚に圧倒.どうせそのうちこの「往復書簡」で明らかにされてしまうだろうが,私は料理をするには「食の欲」が欠けているそうだ.本に没頭して何度鍋をこがしたことか.最近,数学もようやく進化して,生物とか脳のように複雑なものも扱える道具が揃ってきた.高校で習った暗記型生物は嫌いだったが,人間の脳の数理には興味がある.この往復書簡で,専門家のオオスミ先生に皆さんと一緒に色々教わろうという魂胆なのだ.
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by norikoosumi | 2006-01-22 15:10 | 河北新報往復書簡